労働時間の上限規制の基本|副業・兼業をしている従業員の労働時間
労働時間の上限規制と副業・兼業の労働時間の基本 労働時間規制の適用除外について
千葉県を中心に、企業の労務管理を支える社会保険労務士法人アットロウムです。企業としては、働きたい人に好きなだけ働いて稼いでもらいたいという希望があるものの、労働時間には上限規制があり過重労働による健康・安全への配慮もしなければならず野放しには出来ない、という悩みをよくお聞きします。そこで今回は、労働時間の上限規制と労働時間が通算されない副業・兼業の基本ポイント、労働時間規制の適用除外として定められた「監視又は断続的労働に従事する者(労働基準法第41条3項)」について解説します。
労働時間の上限規制
法律など関係なくたくさんの時間を働かせたい経営者、残業代を稼ぐため際限なく働きたい従業員などについてご相談がありますが、法律では時間外労働・休日労働含めて以下のように上限が規定されており、違反した場合には、罰則(6か⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦)が科され るおそれがあります。
引用:厚生労働省時間外労働の上限規制“お悩み解決”ハンドブック
https://jsite.mhlw.go.jp/iwate-roudoukyoku/content/contents/handbook.pdf
労働時間の基本 過重労働によるリスク(健康障害)
1日8時間・1週40時間を超える時間外労働、休日労働が長くなるほど、脳・心臓疾患、精神障害など健康障害のリスクが高まるという関係が認められています。
労働時間の基本 過重労働によるリスク(企業の安全配慮義務違反)
労働時間の上限規制を無視し健康障害のリスクを考慮せず、従業員を働かせて精神障害等が発症した場合、企業は安全配慮義務違反で従業員から損害賠償請求されてしまう可能性があります。
企業は労働者の安全に配慮する義務があります。(労働契約法第5条)
実際の事例では脳血管・心臓疾患などにより倒れてしまった場合、従業員自身の食生活、不摂生な生活習慣による影響が大きいのでは?と考えられることも多いので、常日頃、従業員の健康状態には配慮しておくと良いでしょう。
繁忙期だからしょうがないといってリスクのある残業を指示している、残業代を稼がせてくれとせがむ従業員をコントロール出来ず長時間労働を放置しているなど心当たりのある企業の方は、以下の厚生労働省の労災認定基準を示したリーフレットを参考に、健康障害の発症リスクなど分析し対策を講じる必要があります。
厚生労働省HP:脳・心臓疾患の労災補償について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/090316_00006.html
厚生労働省HP:精神障害の労災認定
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken04/120427.html
労働基準法が適用されない・労働時間規制が適用されない場合
労基法第 38 条第1項では「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」と定められ、「事業場を異にする場合」とは事業主を異にする場合をも含む(労働基準局長通達(昭和23 年5月 14 日付け基発第 769 号))と示されており、「労基法に定められた労働時間規制が適用される労働者」に該当する場合、それらの複数の事業場における労働時間が通算されます。
①次の例のような形で副業・兼業を行っていた場合、労働時間は通算されず労働基準法は適用されない。
例 フリーランス、独立、起業、共同経営、アドバイザー、コンサルタント、顧問、理事、監事等
※但し、実態は雇用されているのと変わらないような場合には、労働者性が認めら労働基準法が適用される場合があります。
②労働基準法は適用されるが労働時間規制が適用されない場合
例:農業・畜産業・養蚕業・水産業、管理監督者・機密事務取扱者、監視・断続的労働者、高度プロフェッショナル制度
但し、「これらの場合においても、過労等により業務に支障を来さないようにする観点から、その者からの申告等により就業時間を把握すること等を通じて、就業時間が長時間にならないよう配慮することが望ましい。」とガイドラインで定められています。
引用:厚生労働省 副業・兼業の促進に関するガイドライン(令和4年7月改定)
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000962665.pdf
労働時間等に関する規定が適用除外となる「監視又は断続的労働に従事する者(労働基準法第41条3項)」とは
引用:厚生労働省・岩手労働局
https://jsite.mhlw.go.jp/iwate-roudoukyoku/content/contents/kanshidanzoku031025.pdf
ご相談をいただく職種 施設管理(守衛、門番、社員寮の寮母)、医師、看護師(夜勤当直)など
まとめ
監視または断続的労働に該当するとして適用除外の許可を受ける事ができるケースは決して多くないと思いますが、たくさん働いて稼ぎたい、スキルアップしたい従業員と法規制の板挟みになっている企業のご参考になれば幸いです。従業員のニーズにこたえ、労働力の確保定着に向けたひとつの手段として検討してみてはいかがでしょうか。許可申請をお考えであれば、所轄労働基準監督署または弊所までお気軽にご相談ください。
