安全衛生における予防労務とは?
予防労務とは、労働者が働く上で、身体や精神に影響を及ぼすリスクを予め予防し、労働環境をより安全で健康的なものにすることを目的とした取り組みのことを指します。具体的には、職場で発生する事故や疾病を未然に防ぎ、働く人々の健康と安全を守ることを目的としています。予防労務は、労働者の健康と安全を保障することが目的であり、企業にとっても利益をもたらすものです。労働者が安心して働くことができれば、生産性が向上し、企業の競争力も高まることが期待できます。
なぜ安全衛生における予防労務が必要なのか?
予防労務が必要となる理由は、以下のようなものがあります。
②生産性の向上
③法令遵守
ここからはそれぞれの項目について詳しく解説していきます。
①労働災害や疾病の予防
職場での事故や疾病は、労働者にとって大きなダメージを与えるだけでなく、企業にとって もコストとリスクを伴います。労働災害や疾病を予防することで、労働者の安全と健康を守り、企業の経済的負担を軽減することができます。
労働災害の予防
労働災害の予防には、安全衛生管理が重要です。具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。
・危険な作業を行う前に、リスクアセスメントを実施する。
・作業場所や作業機器の安全確認を徹底する。
・作業手順や安全マニュアルを策定し、労働者に指導する。
・事故や異常発生時の緊急対応マニュアルを策定する。
・定期的な安全衛生教育を実施する。
・事故報告や事故原因の調査、再発防止策の策定を行う。
これらの取り組みによって、労働災害の発生を予防し、労働者の健康や安全を守ることができます。
疫病の予防
疫病の予防には、感染症対策が必要です。具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。
・感染予防対策:手洗いやうがいの徹底、マスク着用など、感染予防対策を徹底する。
・作業場所の衛生管理:作業場所の定期的な消毒や換気を行い、清潔な環境を維持する。
・社内外の接触の制限:外出自粛やリモートワークの導入など、社内外の接触を制限する。
・感染症の情報提供:感染症の情報提供や対策の周知徹底を行う。
これらの取り組みによって、疫病の拡大を防止し、労働者の健康を守ることができます。労働者の疲労やストレスを軽減し、健康な状態で働くことができるようにすることで、労働災害や疾病を防ぐことが可能です。
②生産性の向上
予防労務において生産性の向上を図るためには、以下のような取り組みが必要となります。
作業環境の改善
作業環境の改善は、労働者のストレスや疲労を軽減し、健康や安全に配慮した職場環境を整備することで生産性を向上させることができます。例えば、快適な室温や照明環境、静かな職場などは、労働者のストレスを軽減し、集中力を高めることができます。PCをマルチモニターにすることは生産性の向上に効果的です。イスへの設備投資は肩こり腰痛対策にもなり、従業員に歓迎されます。
労働時間の適正化
適正な労働時間を確保することは、労働者の健康を維持し、ストレスを軽減することができます。労働時間が長すぎたり、過剰な残業が発生すると、生産性の低下や健康被害を引き起こすことがあります。労働時間の適正化によって、労働者の生産性を維持し、安全な職場環境を整備することができます。独身者、子育て世代などライフステージに応じた従業員の要望に答えられかつ法的にも問題ないキャリアパスを用意できれば理想的です。時間外労働は長さに比例して、脳・心臓疾患、精神疾患の発症率が高くなります。企業が安全配慮義務を怠ったと判断された場合の経営リスクは甚大です。
疲労軽減の取り組み
疲労軽減の取り組みは、生産性の向上に直結する取り組みです。例えば、定期的な休憩時間の設定、運動やストレッチなどによる体のメンテナンス、健康的な食生活の促進などが挙げられます。これらの取り組みによって、労働者の疲労を軽減し、生産性の向上を図ることができます。座りっぱなしは寿命を縮めるらしく、健康経営宣言をしている弊所ではタイマーをセットして1時間おきにみんなでストレッチをしています。
トレーニングや教育の実施
トレーニングや教育の実施によって、労働者の技能向上や知識の増加を促し、労働力の質を向上させることができます。労働者のスキルアップによって、業務の効率化や品質の向上を図ることができます。また、安全・衛生管理に関するトレーニングや教育を実施することで、労働災害の予防につながることがあります。
労務監査を実施すると、法令で定められた雇い入れ時の安全衛生教育、従事する業務内容が変わったときの教育が満足になされていない事が少なくありません。教育というと、大がかりなものをイメージするかもしれませんが、ぜひ新人さんが入社したら、ちょっとしたことのようでも必ず業務に取りかかる前に指導して頂きたいところです。
つい油断して説明が後回しになり事故につながってしまうような例としては、転倒リスクがある場所(例:段差、滑りやすい)、脚立で行う作業、枝切りハサミ、などによる災害があります。
しっかり取り組んでいる企業は、毎月定例会議でヒヤリハット事例の共有、インシデント報告を必ず行い記録しています。
③法令遵守
予防労務においては、労働安全衛生法や労働基準法、労働者災害補償保険法などの法令を遵守することが求められます。これらの法律は、労働者の健康と安全を守るために設けられたものであり、企業にとっては法令遵守が義務付けられています。
以下に、予防労務において法令遵守が必要となる法律について説明します。
労働安全衛生法
労働安全衛生法は、労働者が安全かつ健康的に働くことができるようにすることを目的とした法律です。この法律に基づき、以下のような職場での事故や疾病の予防策を講じることが求められることがあります。
・職場の危険性の評価
・作業場所の環境改善
・労働者の安全教育
・事故報告と事故原因の解明
・保健所との連携など
労働基準法
労働基準法は、労働者の労働条件の保護を目的とした法律です。この法律に基づき、労働時間や休憩時間、休日、賃金などに関する基準が定められています。
予防労務においては、以下のような義務が使用者に課されます。
・労働時間の上限規制遵守
・法定休憩時間の確保
・法定休日の確保
・適正な賃金の支払い
労働者災害補償保険法
労働者災害補償保険法は、労働災害や労働による疾病に対する補償を行うための法律です。
この法律に基づき、労働災害や労働による疾病の発生防止が求められます。
最後に
労働災害や疫病の予防には、企業自身の取り組みが欠かせません。しかしながら、法律や規制の改正など、常に変化し続ける状況に対応するには、専門的な知識や経験が求められます。
そのため、社労士の活用を推奨します。社労士は、労働基準法や労働安全衛生法を守備範囲としており、法令で義務化された安全衛生管理体制の構築の支援を行うことが出来ます。また、弊所は労働安全・労働衛生コンサルタントと連携して、企業の規模や業種に合わせた、具体的な予防策のサポートを提供することができます。労働災害や疫病の予防について、より効果的な対策を講じるために、ぜひ社労士の活用をご検討ください。弊所のお客様で、安全衛生活動、健康経営を積極的に推進している顧問先様は以下の様に健康経営優良法人の認定を受けブランディングにも取り組んでいます。
社会保険労務士法人アットロウムでも予防労務のサポートをおこなっていますので、お気軽にお問い合わせください。