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令和4年度の年度更新 労働保険料申告について社労士が解説

2022.04.27 コラム

千葉県を中心に、企業の労務管理を支える社会保険労務士法人アットロウムです。令和4年度の労働保険料申告に取り組む時期になりました。今回は、労働保険制度の仕組みと労働保険料の申告手続きについて紹介します。

 

❶労働保険の制度について

労働保険とは労働者災害補償保険(一般に「労災保険」といいます。) と雇用保険とを総称した言葉です。労働者(パートタイマー、アルバイト含む)を一人でも雇用していれば、原則として、業種・規模を問わず労働保険の適用事業となり、事業主は労働保険の成立(加入)手続を行い、労働保険料を納付する必要があります。

 

①労災保険の対象者

常用、日雇い、パート、アルバイト、派遣等、名称や雇用形態にかかわらず、労働の対償として賃金を受けるすべての方が対象です。

 

1)労災保険制度から行われる給付について

労働者が仕事上または通勤によってケガをしたり、病気、障害の状態になって

しまったときなどに治療や休業補償などの保険給付を行います(労災保険法第7条)。業務上の疾病が保険給付の対象となりますが、コロナ渦においては、従業員の新型コロナウイルス感染のような労災の対象となるのか判断しにくい場面に遭遇した経営者、人事総務担当者の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

もし、労災保険給付の対象となるかどうかについて判断に迷うことがあれば以下、行政のQAを参考に労働基準監督署に相談してみるのがよいでしょう。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html#Q7-1

1}労災保険料率と保険料の決まり方

 労災保険料は全額企業の負担で、企業が1年間で全ての労働者に支払った賃金の総額に対し、事業の種類ごとに定められた保険料率を乗じて計算します。製造業や建設業など他に比べて重大事故が起こりやすく災害リスクの高い業種は保険料率も高いです。

令和4年度の労災保険率等 厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudouhokenpoint/dl/rousaihokenritu_h30.pdf

②雇用保険の対象者(被保険者)

31日以上引き続いて雇用される見込みがあり、1週間の所定労働時間が20時間以上であれば被保険者となります。事業主は、雇用保険法に基づき、適用基準を満たす労働者について、事業主や労働者の意思に関係なく、被保険者となった旨を公共職業安定所(ハローワーク)に届け出なくてはなりません。

2)雇用保険制度から行われる給付について

労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、再就職を促進するため必要な給付を行うものです。また、失業の予防、雇用構造の改善等を図るための事業も行っています。主な給付内容等は、失業の状態で就職活動をしながら受給する「基本手当(失業保険)」、「育児休業給付金」、雇用保険料を財源とした「雇用調整助成金」が主に知られています。

2)よくあるトラブル事例

20時間未満の所定労働時間だった労働契約のパートタイマーが、雇用保険の加入基準の20時間以上で働くことが通常になっていて長期間働いているのに被保険者となる手続きがとられていないことがあります。退職時に、失業保険がもらえないという不利益を被る事態が発覚しトラブルになります。常日頃から労働契約内容や実労働時間、適用基準をしっかりと把握しておく必要があります。

2}雇用保険料率と保険料の決まり方

雇用保険料は労災保険料と異なり、事業主と労働者(被保険者)の両方が負担します。労災保険ほど細かくないですが、事業の種類によって保険料率が決まっており、それぞれの負担割合が定められています。事業主・労働者が負担する雇用保険料の計算は1年間で労働者(被保険者)に支払われる賃金の総額に料率を乗じます。

令和4年度の雇用保険料率は、年度の途中で保険料率が変更します。労働者(被保険者)負担分は従業員の給与から控除するので給与計算のときに控除保険料を間違えないよう注意が必要です。

令和4年度の雇用保険料率について 厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000108634.html

 

❷労働保険の年度更新手続き

  • ①労働保険の年度更新とは

毎年、41日~翌年331日の1年間(保険年度)の支払賃金を集計し納付額を確定して、年に161日~710日までに、企業が概算保険料と確定保険料を各都道府県の労働局に申告・納付することを年度更新といいます。

1)概算保険料とは?

対象となる労働者の当該年度(令和441日~令和5331日)の見込み賃金総額から概算の労働保険料を計算し前払いします。

1)確定保険料とは?

対象となる労働者の前年度(令和341日~令和4331日)に支払った賃金総額から確定保険料を計算します。前年度に前払いした概算保険料との過不足の精算を行います。

 

令和4年度の申告書の書き方等については、以下のページでご確認ください。

令和4年度労働保険の年度更新期間について 厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/hoken/roudouhoken21/index.html

 

②年度更新の手続きの流れ

1)申告関係書類の確認

毎年5月下旬頃に労働局から企業宛てに封筒が郵送されてきます。中身は以下の書類です。

 

1.労働保険 概算・増加概算・確定保険料 石綿健康被害救済法 一般拠出金申告書

2.確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表

3.労働保険 年度更新 申告書の書き方

 

1}確定保険料の計算について

確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表の作成

作成の流れを説明します。

 

 

1」労働保険対象者の範囲を確認する


令和4年度労働保険の年度更新期間について 厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/hoken/roudouhoken21/index.html

よくある間違い

・アルバイト、パートタイマーを対象に含めていない

・業務委託契約者が含まれている

・従業員が役員になっていて労働者としての実態がないのに雇用保険の被保険者になったまま

・事業主の親族の保険適用が間違っている

※事業主との同居の有無、労働者としての実態がある働きかたをしているかどうかによって、労災・雇用保険の適用の有無が変わります。正しい対応がなされていない例は少なくありません

 

1労働保険の対象となる賃金を確認する

労働の対償として支払うすべてのものをいいます。基本給(月給、時給、日給他)、残業代、賞与などわかりやすいものは当然、通勤手当も含みます。コロナ渦において、休業手当(労働基準法26条に基づく手当)やコロナ被害に対する見舞金などを支給した企業は以下の表を確認し、参入すべき賃金を間違えないようにしてください。
令和4年度労働保険の年度更新期間について 厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/hoken/roudouhoken21/index.html

 

1}確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表について

(毎月の合計、賞与)を記入します。

令和4年度労働保険の年度更新期間について 厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/hoken/roudouhoken21/index.html

 

確定保険料の計算・申告書の作成の基礎となる表ですが労働局に提出する必要はありません。調査のときなどに労働局から提出を求められることがあるので、申告書の控えと合わせて保管してください。

 

令和341日から令和4331日までに使用したすべての労災保険・雇用保険の対象労働者の人数および支払われた賃金(支払義務が具体的に確定した賃金を含みます)の総額を記入します。

社会保険の算定基礎届と異なり支払われた月が対象になるわけではありません。例えば、「月末締め(31331給与計算期間)支払日が翌月の410日」の賃金であれば、労働保険では「3月分」の賃金として扱います。

 

2)確定保険料(令和3年度分)の計算式

労災保険

労災保険対象者の賃金総額 × 労災保険料率 = 保険料

雇用保険

雇用保険対象者の賃金総額 × 雇用保険料率 = 保険料

 

2)概算保険料(令和4年度分)の計算

新年度に支払うであろう予定の賃金総額の見込み額に保険料率を乗じて計算します。予定の賃金額が半額~2倍(前年度の1/2以上~2倍以下)であれば、前年度の賃金総額を新年度の賃金総額として保険料の計算をします。

 

③申告書の書き方

集計表にて算出した賃金総額の金額や雇用保険被保険者数などを集計表記載の内容にしたがい申告書に転記し、確定保険料額との過不足を計算・記入します。

申告済みの概算保険料を確定保険料が上回る場合(多く納めた)は今年度の概算保険料等にあてる。下回る場合(少なく概算を納めた)は不足額を今年度の概算保険料とあわせて納付するといったような対応になります。

納付回数は1回または3回で、概算保険料額が40万円以上の場合、3回に分けて納付できます。

 

令和4年度労働保険の年度更新期間について 厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/hoken/roudouhoken21/index.html

 

④申告書の提出と保険料の納付

申告納付額 計算例

3確定保険料 − R3申告済み保険料 + R4概算保険料 = 納付額  

500,000円     400,000円       500,000円    600,000

 

申告書を所轄の労働基準監督署に、61日から710日までに提出します。

※今年は6/1(水)から7/11(月)

 

申告書の1枚目が提出用で2枚目が企業の控えになります。領収済み通知書(納付書)を金融機関に提出し納付をします。

 

 

執筆者情報
社会保険労務士法人アットロウム 代表社員 藤崎 祐也
保有資格特定社会保険労務士
一言当事務所は2014年に栗田社会保険労務士事務所という個人事務所から社会保険労務士法人アットロウムへと法人化しました。創業から30年を超えても一貫して「労使紛争の予防対応・人事労務の手続きサポート」を主軸に取り組んできました。 近年では、「デジタルツールを利用した業務改善・生産性向上」「労務監査で人事労務リスクを抽出改善し事業承継・企業価値の向上サポート」に注力しています。 「人事労務を通じて持続可能な企業づくりと地域の発展を支援する」ことを弊所の役割と捉え、何が出来るか日々探求し、実践行動しています。
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