問題社員の改善指導方法とは?注意点やリスクを社労士が解説!
千葉県を中心に、企業の労務管理を支える社会保険労務士法人アットロウムです。問題社員にも類型があり、企業はそれらに適した対応方法を検討する必要があります。横領、刑事事件のように犯罪を起こした問題社員については、企業が許容できない内容であれば、退職に向けて話を進めることになりますが、今回は能力不足などまず改善指導が求められる問題社員への対応について解説します。
特に、弁護士や法律事務所だけではなく、解雇・パワハラなどの労務面の観点から社労士にご相談いただくことも一般的です。
必要に応じて就業規則の改訂やハラスメント対応もご依頼可能です。
ぜひ最後までご覧ください!
改善指導が必要な問題社員の主な類型
・能力不足(職務遂行能力なし)
・協調性がない・上司、同僚、取引先と円滑に仕事ができずトラブルを起こす
・無断欠勤、遅刻早退など勤怠不良
・会社に批判的・方針に従わないなど反抗的態度で秩序を乱す
なぜ改善指導が必要か
従業員の問題行動が見過ごせない状態になり経営陣に報告がくると「百害あって一利なし。いるだけで会社にダメージを与えている。」ということで安易に解雇を選択し即排除しようとすることが少なくありません。十分な理由や証拠がないまま、いきなり解雇といった手段をとった場合、裁判で無効とされ金銭の支払い、復職を命じられてしまうリスクがあります。
業務未経験者、社会人経験が浅いなど分かったうえで採用した社員であれば、なおさら教育・指導育成の義務を果たしたか問われ、安易にこれらを放棄することは出来ません。
そもそも、雇い入れたときは戦力として期待出来るから採用したはずです。それがいつの間にか足を引っ張る問題社員になってしまい、排除する方向で対応してしまいがちです。
排除出来たとしても欠員補充が必要な場合、採用・定着・育成にまたお金や時間がかかります。可能なら問題行動を改善して会社の戦力になって欲しいというのが理想でしょう。
①改善指導を行う前に知っておきたい管理職の法知識
①教育指導する権限
管理職・監督的な職制の立場にある場合、教育指導権限があります。
通常、指導教育の義務を果たさず問題行動を放置して解雇事由とすることは許されません。
②業務指示・命令する権限
業務を効率的・円滑に行うための合理的・正当性のある指示・命令をすることが出来ます。
③職場の秩序を維持するための権限
複数の従業員が集まる職場では規律や協調が必要です。問題行動によって乱された秩序を、就業規則等で定められた懲戒処分を行うことによって回復、保持することが認められています。
②改善指導を行う前に知っておきたい管理職の法知識
上記のような権限が認められますが、業務上必要でない、相当な範囲を超えた指導、業務指示や命令はいわゆるパワハラとして違法となります。懲戒処分についても、事実関係をよく確認せず行う、本人の言い分や情状を考慮せず処分した場合、権利濫用として無効となることがあります。権利濫用にならない、かつ、何でもかんでも「ハラスメントだ!」と騒ぎ立てる従業員に萎縮せず、権利にもとづき正当性のある教育指導・指示命令を行う事が大切です。
改善指導がパワハラと言われないようにするためには、以下パワハラに関するコラムをご確認ください。
【2022年4月施行】改正パワハラ防止法への対応はお済みですか?社労士が解説します
改善指導の流れ
①改善して欲しい行動・問題行動の記録
↓
②改善指導の実施
↓
③上記①②を繰り返す。改善しない場合、問題行動等の程度により懲戒処分や退職勧奨を検討することも。
①改善して欲しい行動・問題行動の記録のポイント
「問題行動・困った行動の事実を記録する」
※エクセル表等に行動の一切を記録。業務指導する担当者をつける。定期的(可能であれば毎日)なレビュー。
※取引先等から当該社員へのクレーム等がされている場合にもそれらの記録
「いつも遅刻していてだらしない」「だらしないからテキトーな資料しかつくれない」このような記録者の主観によるものではなく、遅刻の回数や時間など事実を記録する。客観的な基準にもとづき具体的な不備を指摘する。
②改善指導の実施のポイント
感情的にならず、客観的な基準、事実にもとづき対応する
記録した事実をもとに、人格や人間性を注意・否定せず指導者の主観を極力排除し事実、具体的な基準を示しながら改善指導することで、指導された側の納得感を高めます。若い従業員は社会人として当たり前の事を知らない、中途採用の社員が良かれと思ってした行動が実はその職場では良くないことだったという事が問題行動の背景にはよくあります。このようなケースは、具体的な行動基準がないと若手社員は求められている行動が分からない、転職してきた社員は指導に納得できずわだかまりを感じてしまいます。
人間性や人格にフォーカスしてしまうと、感情論になりやすく指導される側する側も冷静さを保つのが難しくなり指導が上手くいきません。
感情的な対応を続けていると、問題行動が改善されず退職勧奨又は解雇を選択せざるを得なくなったときに話し合いがスムーズにいきません。最悪、訴訟などのトラブルに発展します。金銭よりも感情が強い動機の紛争は解決が長引く傾向です。
②改善指導の実施のポイント
改善策を提示させてフォローする
1.改めて欲しい・改善してほしい態度や行動を伝えて本人に改善案を提示してもらう
↓
2.改善につながる内容となっているか確認
(具体的でないなど実効性がないものであれば差し戻す)
↓
3.フォローアップ(どうすれば改善されるか一緒に考えて協力する)
改善指導の対応事例
1.内容
経営方針に反する発言、同僚や上長とのコミュニケーションに非協力的な態度・行動を改めるよう指導しているがなおらなくて困っている。
2.対応
問題行動の記録を整理。指導の根拠となる会社が求める従業員としてふさわしい行動を整理し人事評価基準を作成して本人に示した。面談し会社の頑張って欲しい方向と従業員の努力の方向のズレを確認(能力はあるが独善的で孤立してしまい問題社員になっていった経緯)。会社が期待する頑張って欲しい内容を共有し、従業員の努力が独りよがりにならないよう定期にフォローアップ面談を実施するようにした。
まとめ
問題社員と向き合い改善指導を行っていく過程で、自社の問題点・課題が見えてくることがあります。
本記事でお伝えした問題社員類型は、新人さんに排他的な現場の雰囲気(ハラスメント)、社内で共有された具体的な行動指針・基準がない(評価制度らしきものすらない)、といった
見えにくい部分が企業経営にとって見過ごせないトラブルとして表面化したと感じるケースが多いです。問題社員対応(重~軽)、ハラスメント対策、評価制度構築などでお困りであれば、お気軽にご相談ください。